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| 新・管理者の判断力 - ラショナル・マネジャー - |
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1.本の紹介 本書の中身はお勧めですが、本のタイトルが紛らわしいですね。 「新・管理者」とは新しく管理者になった人を対象にしていると勘違いされる。 私ならタイトルを「新・管理者の判断力」でなく、「マネージャーの思考力」としたい。 つまり、本書は「管理監督者層」よりもトップを含めた「経営幹部層」を対称にしており、マネージャー層のチームとしての問題解決・意思決定・実行時のリスク予測の方法を解説しているのです。 人間は無意識のうちに各人勝手に基本的な4つの思考パターン(何が起こっているのか? どうしてそうなったのか? どういう処置をとればよいのか? 将来どんなことが起こりそうか?)を使っている。 そして、優れた経営者は、これらの思考を行うときに、ある「ほぼ共通した思考パターン」をもっている。 それを、形式化してなぞっていってみよう、というのがKT法の考え方なのです。 その思考パターンを、フォーマット化(様式化)して、組織で活用できるようにした標準化したプログラムがKT(ケプナー・トリゴー)法で、4つの分析方法があります。 (1) 状況把握(状況分析)・・・SA (Situation Appraisal) (2) 問題分析(原因究明)・・・PA (Problem Analysis) (3) 決定分析(選択決定)・・・DA (Decision Analysis) (4) 潜在的問題分析・・・PPA (Potential Problem Analysis) このKT(ケプナー・トリゴー)法には以下のメリットがあります。 1.問題解決や意思決定における、時間や費用のムダを、極力減らすことができる。 2.情報の収集と利用の方法を改善できる。 3.相手に自分の考えを正確に伝えられる。 4.組織を構成する多数の人たちの意思を、無理なくひとつの方向へ導ける。 5.各人がもっている知識・経験・情報・問題意識などを共有化できる。 6.組織全体の思考の効率をあげることができる。 本書では、抽象的な概念の説明だけでなく、チームがさまざまな業種の経営課題にどの様な分析方法を適用して結論を出したのかを多数紹介しており、事例を読むだけでも興味深くて面白い内容です。 2.本を選んだ動機 1985年、私はKT法のAPEXコースを受講しました。 当時は、関係者が集まって工場設備や製品の品質を改善するために暫定・恒久対策を決定する方法なんだ、というぐらいのイメージでした。 1人数十万円の研修だったのですが、視野の狭い技術者にはその真価を理解できなかったのです。 私は、その時にKT法の解説書ともいうべき「管理者の判断力」も買って読んだのですが、今でもあまり内容を鮮明に憶えておりません。 ところが最近、あるきっかけから、KT法を復習することになりました。 それは、皆さんご存知の、岡本正耿先生の講演「経営がどんどんよくなる考え方」(三重県経営品質協議会月例会2004年5月26日)です。 岡本先生は「プロセス思考」のお話の中で、「社会システムでは、思考方法を全員が共有しないと話し合いが成立しない。」そして、「思考方法(道具)を共有してない組織では、事実・意見・感情が「ごった煮」の会議が行われている。」とおっしゃり、キヤノンやホンダの社内で共有されている思考方法の事例として「KT法」のさわりの部分を紹介されました。 それまで岡本先生は、「考える」とか「思考方法」ということを何回もお話しされているのですが、私は何回聞いてもピンとこなかったのです。 一方では社内での会議のやり方に対して、参加者がもっと深く考え、メリハリのある結論を導くプロセスに変えたいと思って試行錯誤していました。 そんな折に、「経営がどんどんよくなる考え方」のお話を聞いて妙にKT法の事が気になって、約20年前に受講した時のKT法-APEXコースのテキストを自宅の本棚から探し出して読み直しました。 そして、チームとしての問題解決・意思決定の基本コンセプト、今でもそのまま活用できる普遍的なフォーマット(ワークシート)、分析の論理的な流れと構成、さらには「関心事」「意味」「事実」「ステートメント化」等のコトバの重要性・・・等など実務で活用できると確信しました。 同然の成り行きとして、改訂され中身が新しくなった「新・管理者の判断力」を読んでみたのです。 そして本書の色々な経営課題の解決事例を読みながら、経営品質でいうところの、話し合いのプロセスとコンテンツ・対話による「知」の創造・チーム学習・組織の成熟度などのコトバ等の意味しているところが実態としてイメージがつかめてきたような気がしました。 なお、最近ではAPEXコースはPSDM(Problem Solving & Decision Making)コースと改名され1人150万円!!だそうです。 3.重要な論点と考察 1)論点:KT法は会議の交通整理だ 組織の中では、「会議」という名のもとに、このイベントには色々な事が詰め込まれ運営されています。 会議とは「何人かの関係者が寄り集まって、一定の題目について何らかの判断や決定を下すために話し合うこと」だそうです。(三省堂 『新明解国語辞典 第五版』より) とすると、テーマが不明な場合(目的や狙いがわからない)、判断しない場合(結論の判断基準がわからない)、決定しない場合(選択肢を考えていない)、話し合わない場合(単方向の連絡)は、会議と呼んではいけないことになります。 ◆考察◆ 組織の中でよくあるのは、みんながなんとなく大事だと考えている関心事があるけれども、誰も何もせずにほったらかしにしている状況です。 このような場合に使うのが、@状況把握です。 状況把握では、(i)何が問題か (ii)その問題はどうなっているか (iii)その問題を解決するには具体的に何をするか (iv)何から手をつけるか、という順番で話し合いを行います。 つまり、「@状況把握」によって、混乱した状況の中から、今置かれている状況を正確に理解して、整理します。そのアウトプットとして、 ・どうしてそうなったのかを究明しなければならない(「A問題分析」)のか、 ・どういう処置をとればいいのかを決めなければならない(「B決定分析」)のか、 あるいは、 ・将来どんなことが起こりそうかを分析しなければならない(「C潜在的問題分析」)のか、 などを決めていきます。 まさしく、どの様な目的でどの様な会議をするのかを交通整理する感じです。 いうなれば、会議の目的は、KT法の4つの分析方法、つまり、@状況把握、A問題分析、B決定分析、C潜在的問題分析、のどれかしかない。 言い換えると、(1)何が起こっているのか? (2)どうしてそうなったのか? (3)どういう処置をとればよいのか? (4)将来どんなことが起こりそうか? という4つの問いかけに答えを出すことが会議の本来の目的ではないかと考えます。 2)論点:KT法は「暗算」でなくて「筆算」だ KT法ではそのテーマに関わる人たちが、@状況把握、A問題分析、B決定分析、C潜在的問題分析、のパターンに応じたフォーマット(ワークシート)を活用して、話し合いながら合意を形成するやり方です。 そして話し合いに参加する人たちはそのテーマの専門家であり、KT法の思考方法を共有していることを前提にしています。 ◆考察◆ 組織における意思決定の場面では、そのテーマに関連する人たちが集まって話し合いをします。 集まったメンバーは、当然その道のプロであり、実務経験も豊富な人たちです。 彼らからすると、KT法は初めから想定していた予想に結論を近づけるだけではないかという声が聞こえてきそうです。 しかし、分かっている様な結論であっても、それが実行に移されない意志決定ほど無意味なものはありません。 KT法の特徴は、「多くの人が納得し共有できる答えを見つけ出すこと」「 そのために思考のプロセス(特に問題意識、情報、知識、経験)を明確化・共有化して考えること」 だと言えます。 「暗算」で出された結論は、そのプロセスが見えないのでメンバーの自発的行動にはつながりにくいのです。 「筆算」で書かれていると、そのプロセスがワークシート上に可視化されますし、その結論を出す過程が論理的に理解され、実行に向かっての合意形成が得やすくなると考えます。 さらには、もし結論が間違っていてもそのプロセスを振り返って改善することもできますから、チームとしての問題解決力の評価も可能となり、改善を繰り返すことで最終的にはチーム学習が活性化し、組織の成熟度が向上すると思います。 3)論点:KT法と戦略策定・展開プロセス KT法は先に述べたように4つの分析方法、つまり@状況把握、A問題分析、B決定分析、C潜在的問題分析、があります。 これらは、それぞれ次のような関係になっています。 @状況把握
これらの関係を見ていると、戦略策定の基本プロセスに似ています。 一般的なそのプロセスは、環境分析 → SWOT分析 → 重要成功要因 → 戦略の展開です。 KT法と対比させてみると以下のようになります。 @状況把握 : ビジョンを実現しようとする我々の外部や内部で、どの様な重要な事が起こっているのか?・・・環境分析 A問題分析 : ビジョン実現を阻害しているの真因は何か(強み・弱みや機会・脅威)?・・・SWOT分析 B決定分析 : ビジョン実現にはどの成功要因を採択すればよいか? それにはどんなまずいことがあるか?・・・重要成功要因 C潜在的問題分析 : いつまでに何をしたいのか? 考えられるリスクは?・・・戦略の展開 この様に、KT法の思考方法は、ビジョン実現に向けての問題解決・意思決定・実行時のリスク予測を行うための思考ツールとして活用することができます。 さらには、おそらく組織の中のあらゆるプロセスそのものを改善改革するための共通的な思考ツールとしても活用できると思います。 (作成者 松下電子部品(株) 鍵谷清作 氏) |