経営品質向上プログラムのミッション
経営品質向上プログラムは「経営革新を目指す人と組織を支援する」ことを目的につくられたものです。このプログラムによって、経営革新を目指す人と組織にイノベーション(革新)が定着することをねらいとしています。
- 経営品質を導入する? 経営品質を推進する?
こういう言い方をよく耳にしますが、本質を外した話だといっていいでしょう。「経営品質を導入する」「経営品質を推進する」としてしまうと、結果として導入することが目的化し、高い顧客価値を生み出す組織の実現が難しくなります。私たちの目的は、卓越した経営を目指して絶えず革新を行うことです。その意味では、革新を通じて「経営品質を高める」という方が適切でしょう。
- 「昨日と同じことを繰り返していればいい」「今までどおりで上手くいっている」「ウチはこのやり方で成功してきた」は革新の敵!
革新とは、従来の考え方・習慣・やり方のままでいることを良しとせず、より高い顧客価値を実現するために常に新しいものを創造し続けるということです。経営品質向上プログラムは、経営革新を目指す人と組織に「革新のための変革思考」と「革新のプロセス」という価値を提供しようとしています。
- とにかく変わらなくてはいけないのか?
革新は、むやみに変わることを目的とするのではありません。革新の目的は、より高い価値を生み続けるために、何が課題なのかを明らかにし、その課題を克服していくための変革のプロセスを組織が身につけていくことです。経営品質向上プログラムでは、セルフアセスメントという方法を用いて、組織能力を革新できる状態に高めようと考えているのです。
経営品質とは
品質とはもののふさわしさ、適切さを意味している
品質は「クオリティ」という言葉を訳したものです。クオリティの語源はギリシャ語の「クオリス」です。クオリスは「物事の明らかさ、適切さ」を意味しています。ここでいう「適切」とは「すべてに適切である」ということではありません。ある目的に対して適切かどうかです。品質は目的と深く関係している考え方なのです。
- 「品質」か「質」か
日本では「品質」という言葉は製品の機能や特性を表すものととらえられてきました。ものの質だから「品質」だという概念が定着しています。このため「サービス分野で品質活動が行われないのは品質という言葉に原因がある。品質ではなく質という言葉にすべきだ」という議論があるほどです。しかし「品質」がいいのか「質」がいいのかということには、あまり意味を見出せません。重要なのは言葉の概念だからです。
- 品質と目的
あるサービスが、急いでいるお客様にとって適切であっても、ゆっくりとくつろぎたいお客様にとっては適切でなくなることがあります。急いでいるお客様に対しての時間価値を目的としたサービスの質と、ゆっくりとくつろぎたいお客様向けの時間価値を目的としたサービスの質とは異なるのです。
適切さは状態で判断する
品質とは状態を表しています。目的に対しての適切さの度合いこそが、状態なのです。この適切さとは「適切か不適切か」というように簡単に割り切れるものではなく、状態を判断することが重要なのです。
- 状態をチェックする
状態を見るとき、チェックリスト的に「できている、できていない」という判断をするのは正しいとはいえません。目的を実現するために行っていることと、その状態をさらに良くするために行っていることを、きちんと見ていかなくてはならないのです。
経営品質とは目的を実現できる組織の状態を意味している
経営品質というと少し耳慣れない印象を受けるかもしれません。しかし、品質はどれだけ目的に適した状態かを意味していますから、製品やサービスを生み出す組織をどう経営するかについても、その経営が目的にふさわしいかどうかは判断できるはずです。
例えば良い製品を生み出せば事業を起こすことができます。しかし、お客様にとって価値がある良い製品を生み出し続ける能力を身につけなければ、事業を継続発展させることはできません。良い価値を生み続ける組織をつくるために、経営の状態をもっと高めようということが経営品質の考え方なのです。- 時を告げるのではなく、時計をつくる
ジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラス共著の「ビジョナリーカンパニー」は経営のベストセラーになった本です。この本は、時代を超えて際立った存在であり続ける企業18社を選び出し、設立から現在に至る歴史全体を徹底的に調査、ライバル企業と比較検討し、永続の源泉を「基本理念」にあると解き明かしたものです。その第2章が「時を告げるのではなく、時計をつくる」というタイトルです。正確な時を告げることは素晴らしいことであるけれど、もっと素晴らしいことは正確な時を告げることを可能にする時計をつくることです。すなわち、優れたアイディアや優れた指導者の存在は素晴らしいことではありますが、いずれも単発の出来事で終わってしまう恐れもあります。それよりもっと素晴らしいのは、優れたアイディアを生み出し続ける組織、優れた指導者を輩出し続ける組織なのです。
- お客様の考え方は変化する
良い組織とは、いつでも同じ状態にあることはありません。さまざまな影響によってお客様の考え方は変化します。その変化に対してもっと高い価値を提供できるような組織に変えていくために、革新能力を高めていく必要があります。経営品質とは、価値革新を生み出す組織の状態を高めようという考え方なのです。
経営品質向上プログラムが目指す価値革新
経営品質向上プログラムは、常に変化する顧客価値を重視し、絶えず高い価値を実現するための革新を生み出し、革新に次ぐ革新を続け、卓越した経営を実現することを目的としています。卓越した経営とは、自己実現を目指した経営だととらえています。自分のためではなく周囲の人や社会を良くするための目的を持ち、それを実現することを求めています。つまり、経営の価値観・目的を明らかにしなければ、卓越した経営は実現し得ないのです。自己実現とは自分が到達すべき最高の状態を目指すということですから、価値観がはっきりしていなければそこに到達することができないのは当然のことなのです。
- 流行より大切なもの
「売上が大きい」「利益率が高い」「ヒット商品をつくっている」「社員の給与が高い」「親切なサービスが徹底している」など、卓越したと思われる状況はいくつもあります。経営品質向上プログラムでは、価値観・目的を明らかにした経営を求めています。価値観や目的がはっきりしていないと、目先の問題だけに目を奪われ、目的に無関係の「流行りモノ」を取り入れればどうにかなるのではないかと考えてしまう結果になります。こうした経営は、売上・利益のために常に目新しい経営手法を模索しているだけなので、お客様から見たとき、その組織がいったいどのような価値を提供してくれるのかが分かりません。
価値前提の経営の追求
経営品質向上プログラムでは、どのような組織であるべきかという価値を明確にします。このことを「価値前提」の経営といいます。これに対し、価値や目的を明確にせずに、今ここの出来事にその場しのぎで対応したり、その時々の都合で対応したりするご都合主義の経営を「事実前提の経営」といいます。
- 「理想ばかりでは経営はできない、事実前提も重要だ」は正論か?
こう誤解している人がいます。経営品質向上プログラムでは、事実に基づく経営、つまり憶測に頼るのではなく客観性の高い事実をもって経営判断を行うことも重視しています。この「客観性の高い事実に基づく経営」と、前述の「その場しのぎ・ご都合主義の事実前提の経営」とは、まったくの別物です。「ここを目指したい」「こうありたい」「こういう価値を提供する組織になる」といった目的を明確にし、その目的達成という視点から目の前で起きていることを見て判断する場合と、そうした目的がなく判断するのとでは、ものの見方も判断の仕方も異なります。同様に、この価値や目的が明確にされて全社員と共有されている場合とそうでない場合とでは、社員一人ひとりの具体的行動に大きな違いが生じてきます。
- 組織の生き方、出発点
すばらしい社会をつくるという高い目的をもった組織と、自分だけ儲かれば良いとしか思っていない組織とでは、そこに集う人々も、その人々の考え方・行動も大きく異なるのです。出発点としての組織の自己実現、組織の生き方が問われているということになるのです。
価値前提の経営を実現していくうえで、経営品質向上プログラムの基本理念は「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」の4つの要素から構成されており、これらをすべて満たすことが卓越した経営に共通する条件としています。この4つの要素は、組織の価値が明らかになっていないと、それぞれ個別のものとしてとらえてしまいがちになります。この4つの要素に経営が深くかかわっていくことで、組織は目指すべき価値を深く学習していきます。
基本理念を構成する4つの要素については次のとおりです。
顧客本位:
組織を、利益追求の仕組みではなく顧客価値創造のプロセスだと考えています。組織の目的と戦略から顧客満足のあり方を構築し、それを追求することを求めています。
独自能力:
業界横並び・業界常識にとらわれることなく、独自の見方や独自の能力をつくり出すことを求めています。
社員重視:
卓越した経営は、経営者と社員との信頼関係によって成り立っているといえます。深く考え、挑戦し、学び続ける社員を育て、自由に発想し、対話できる組織づくりを目指します。
社会との調和:
社会が組織に求める倫理性・健全性を重視しています。組織が社会性を追求し、それを高めることで組織の思考能力を高め、適切なガバナンスを自立的につくり上げることを目指します。
経営品質が求める成果
経営品質向上プログラムは、最終的に卓越した経営の実現を目指しています。この卓越した経営とは、ある到達点を実現することではありません。経営には「これで完成」という状態はありません。絶えず変化するお客様の価値観、競合企業のイノベーションによって、いつまでも今のやり方が上手くいき続けるはずはないのです。さらに良い状態を追求し創造し続ける能力が組織に備わっているかどうかが重要です。
その意味で、各アセスメント項目では、現状をどう認識するか、その課題をどう明らかにするか、そして課題をどう解決していくかのプロセスを重視しています。既存の枠組みの改善にとらわれることなく、この既存の考え方そのものを変えていく能力を持つ必要があると考えています。
アセスメント項目は、どの組織にも共通する経営の要素を示しています。この経営要素に関する活動を改善・革新していくことによって、組織を目的の状態に近づけていきます。この改善・革新によって成し遂げられている成果を、顧客価値、社員価値、経済価値=利益でとらえています。
ここで重要なことは、経営品質向上プログラムがただ単に利益を追求することだけに目が向けられているのではないということです。私たちが目指すべきことは、最高の顧客満足であり、それを実現するための最高の社員満足です。利益は最高の顧客満足と社員満足を実現する投資のために必要なものと位置づけています。
卓越した経営を実現するための7つの経営要素
経営品質向上プログラムでは、理念に基づいて卓越した経営を実現するうえで必要な7つの経営要素を「重視する考え方」として示しています。これは、現在の経営を取り巻く環境を踏まえ、理念を具現化するために必要な要素です。
<重視する考え方=7つの経営要素>
1.顧客から見たクオリティ
2.リーダーシップ
3.プロセス志向
4.対話による「知」の創造
5.スピード
6.パートナーシップ
7.フェアネス
1.顧客から見たクオリティ
クオリティの語源「クオリス」は、物事の本質や性質を意味しています。クオリティが高いということは、その本質や性質が目的に合致していることを意味しているのです。経営品質向上プログラムでは、目的はすべてお客様の価値に置いていますので「『顧客から見た』クオリティ」という言葉を用いているのです。
目的に合致していることがクオリティの高さを決定するわけですから、重要なのは、同じ目的を持ったお客様をきちんと見極めることが大前提になるということです。けっして、すべてのお客様に合致することや、すべての状況で合致することではありません。
- プロダクトアウト
私たちはとかく自分勝手に都合よく目的を決めておいて、それに合致しているから「クオリティが高い」「いいクオリティだ」と決めつけてしまうことが多々あります。いわゆるプロダクトアウトといわれるものです。プロダクトアウトに陥らないためにも、忘れてならないのは「お客様から見た」クオリティだということです。お客様は製品だけを評価するのではありません。価格、納期対応、お客様サービス、保証体制、営業担当の受け答え、技術協力などあらゆる場面で自分の価値に合致しているかを判断します。お客様を見極め、価値を明らかにし、それに合致した状態をつくることが重要なのです。
2.リーダーシップ
組織の発展は、指導者・リーダーによって決まってしまいます。経営品質向上プログラムでは、革新をリードし、社員や部下が自ら成長する状態をつくり出すことをリーダーシップと位置づけています。そのためには、遠い将来に組織はどのような状態になっているのかを描き、そこに行き着く道筋も示すことが必要です。リーダーの描く思いによって、人の共感を生み、人々を革新に導くのです。そのようなリーダーシップを求めています。
- こんなリーダーは…
経営品質向上プログラムでは、部下を管理し、決められたことをきちんとみんなにやらせる支配統制型のスタイルをリーダーシップとは位置づけていません。支配統制型、つまり部下や後輩のやっていることの細かい部分にまで口を出し、注意したり叱ったりする管理は、自ら成長しようとする意思を妨げることになります。
3.プロセス志向
経営品質向上プログラムでは、業務プロセスのマネジメントという視点よりも高い価値を求めてプロセスを創造していくことに焦点を当てています。すなわち顧客にとってさらに高い価値を生み出すことができるものを創造していくプロセスです。このプロセスを実現するには、人とその能力を中心にしたシステムを価値観や目的に合わせて、最適な状態をつくることが求められます。このシステムは「企画する」「推進する」「コミュニケーションを図る」という3つのサブシステムで構成されています。これは、組織の目的達成のために組織のあらゆる機能(部門)を横断するプロセスです。プロセス志向は、単に手続きとして「何をする」ということに着目した考え方ではありません。物事をどう企画し、推進し、コミュニケーションを図るのかといった、場の雰囲気や流れに注目し、変革の状態づくりに注目した考え方なのです。
- 独自能力に注目
プロセス志向は、目的達成に向けて自組織独自の能力に注目します。業界常識といわれるものにとらわれ、業界で上手くいっていることと同じことをやっていればよいという発想ではなく、自分の能力を最大限に生かして誰も実現できない独自の価値を生み出す流れを構築することが重要です。
4.対話による「知」の創造
卓越した経営を目指していくうえで、常に今までの考え方は間違っているのではないかと、自分自身を疑ってみることが必要になります。他人の話に耳を傾けようとしないようでは、自分の考え方は常に正しいと思ってしまうからです。その意味で対話は組織を革新していくうえで不可欠です。対話によってお互いの知識や知恵を交換しながら、新たな知識・知恵を創造していこうというのが、対話主義という考え方です。
- 対話不成立
人の話を聞かず「そのようなことはあり得ない」という態度では対話は成立しません。「あり得ない」と「無理だ」と決めつけることは、革新や創造を阻害する大きな要因です。組織内でこうした態度や雰囲気が支配していると、社員は現場で実践した知恵を生かすことはできないと考えます。そうなると、現場で知恵を働かせたり、創意工夫をしなくなったりします。組織の話し合いが、本当の対話主義で進められるかを考える必要があるでしょう。
5.スピード
スピードとは、単に早く事を進めるという考え方ではありません。どのようなことにどれだけの時間を配分すれば、いちばん効果的に物事を進められるかということを重視しています。スピードとは、将来の目的のために、今何に時間を配分して、できるだけ早く目的を達成するかという、戦略的な考え方なのです。
- 歯を研ぐ
ハーバード大学のスティーブン・R・コヴィー教授の「7つの習慣」という本に、森の木こりの話が示されています。ある旅人が森を歩いていて、木こりに出会います。木こりがあまりに懸命に木を切っているので、旅人が「いつから木を切っているのですか」と話しかけます。木こりは「5時間以上休まずに木を切っている」と無愛想に答えます。旅人は「少し休んではどうですか。ついでにのこぎりの歯を研いではどうですか。そのほうが作業がはかどるのでは」とすすめますが、木こりは「忙しくてそんな暇はない。木を切るのに精一杯だ」と答える、という話です。
6.パートナーシップ
組織が継続的に発展するには、あらゆる関係者の協力が欠かせません。経営品質向上プログラムでは、広い意味での関与先を平等なパートナーと位置づけ、協力と協調、信頼関係の構築を目指しています。つまり、上下関係をつくらないということが基本的な考え方なのです。しかし、卓越した経営を実現していくためには、時にパートナーに対して指導的立場をとらざるを得ない場合があります。その場合でも、指導のあり方がパートナーに自分たちと同じ能力を身につけてもらうことを目的とすることが重要なのです。常に対等な立場をつくっていくことが本当の良好な関係なのです。
- パートナーは平等で対等な存在
口ではパートナーと呼んでいても、仕入先や外注業者を下の関係に位置づけたり、指導する存在になったりしがちです。一方で、親会社や自分より大きな企業との付き合いでは、その立場が逆転します。関係や取引は対等でなければ成立し得ないのですが、いつの間にか上下の関係にしてしまっているのです。
7.フェアネス
フェアネス、つまり公正であるということは、目的や価値観と深く結びついています。フェアネスとは、組織の価値観や目的に照らして、誰もが分かる規範に従って判断・意思決定することなのです。そのためには、意思決定の根拠となる情報が共有されていなければなりません。つまり、単に場当たり的な意思決定を正当化するための情報ではないということです。
- アンフェアな例
例えば、お客様サービスについて、お客様からの評価で給与査定をするとしましょう。最初はそのつもりでいましたが、途中から不景気の影響を受けて業績が下向きになりかけてきました。そこで「今日からは売上が多い人を評価することにした」と経営者が言い出したら、社員はどう思うでしょうか。このようなやり方を「ご都合主義」といいます。物事を決める基準があいまいだったり、基準を決めても都合よく変えてしまったりすることです。また「新規の案件は役員会で審議して決定する」というルールをつくっても「たいした変更がないものは新規に扱わない」という都合のよい判断を持ち出してしまう場合があります。こうなっては、そこで働く社員や関係者は、どうなるのかがいつまでも分かりません。何をすることが正しいのかが分からなくなるので、いつも経営者の顔ばかりを気にしてしまうのです。社員は決め方がアンフェアだと感じるので、そのような決定事項にきちんと貢献しようという気にはなりません。
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